創作物語 櫻舞物語 第2話 ”零時”

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(image OP theme BREAK OUT! 相川七瀬)

●東条家
 日が暮れて、玄関の灯が灯っている。
 1階は暗い。

●同・2F・洗面所
 鏡を見つめる櫻舞。
 美樹に施されたメイクされた顔が映っている。
 その顔を見て首を傾げる櫻舞。

<インサート>
美樹「(櫻舞の顔を様々な角度からチェックして)よし!これで完璧じゃん!」
<インサート終了>

櫻舞「……」
 小さく息を吐いて洗顔を始める。

●繁華街・アクセサリーショップ
 若者向けの安い商品が並べられたアクセサリーショップ。
 店内は同年代の子たちでいっぱい。
 いつも通りの制服姿、ノーメイクの櫻舞は少し浮いて見える。
 櫻舞は980円のイアリングが吊るされたコーナーに立っている。
 あれやこれやと手に取ってみる。
 後ろを通りがかった女子高生が櫻舞にぶつかる。
女子高生「あ、すいませ~ん」
 おざなりに謝って去ってゆく。
 櫻舞は会釈して、再び商品を物色。

●櫻舞の部屋
 勉強机に向かい、書き物をしている櫻舞。
 手を止め、肩を少し叩く。
 ふと視線の先の小さな包みに目が留まる。
 980円のイヤリングの入った未開封の袋。
 見はしたが、手は伸ばさない。
 再び書き物を始める。

●体育館への通路
 ジャージ姿で一人歩く櫻舞。
 背後から肩を抱かれる。
 顔を向けると、笑顔の美樹。
 友人二人も一緒。
美樹「元気ぃ?」
櫻舞「はあ、まあ」
美樹「相変わらず愛想ないねえ」
 そういって笑う。
亜優(15)「誰?その子?」
美樹「2年の櫻舞ちゃん」
 櫻舞は会釈。
来未(15)「なに?知り合い?」
美樹「この前美容院の前で会って、友達になった(満面の笑み)」
櫻舞のN『友達?……友達なのか?……』
美樹「亜優と来未も、櫻舞にネイルしてもらうといいよ。メチャ上手いから」
 そういって櫻舞の塗ったネイルを二人に見せる。
来未「え?これ、この子が塗ったの?」
 頷く美樹。
亜優「超上手いじゃん?」
美樹「でしょ?」
来未「あたしの爪も塗ってよ」
櫻舞「あ、いやあ……それはたまたまで、今までネイルなんて塗ったことないし……」
亜優「そんなのどうでもいいよ。自分で塗ると絶対失敗するし」
櫻舞「はあ……」
美樹「あ、そうだ。制服どお?こないだあげたやつ。アレ良くない?」
櫻舞のN『あ、ヤバイ……あの日以来着てないし、クローゼットに入れたままだ……』
来未「なに?あんたあの制服あげたの?」
美樹「ネイルのお礼にね」
亜優「マジ?あれ超欲しかったのに」
櫻舞のN『これはマズいな……』
美樹「これから体育?」
 櫻舞が頷く。
美樹「じゃあ、終わったらもう一回制服着てるとこ見せてもらおう」
櫻舞「(慌て)あ、いや今日は……あの、その……染みを付けちゃってクリーニングに出してて……」
美樹「ええ!そうなの?」
櫻舞「すみません……」
美樹「まあ、あげたものだし、いいけどね」
櫻舞「クリーニングから戻ってきたら……」
美樹「そっかあ」

●夢の木・店内
 相変わらずガラガラの店内。
 椅子に腰かけ、新聞を広げているマスター。
 窓の外を眺めてぼんやりしている櫻舞。
 カウベルの音。
零時の声「ホットね」
 その声に振り替える櫻舞。
 零時がこちらへ向かってくる。
 当たり前のように正面の席に座る零時。
櫻舞「(周りを見て)席は他にあるけど?」
零時「(肩をすくめ)そういうところ好きだわ」
櫻舞「(慌て)なっ⁉」
零時「なんか媚びないっていうか」
櫻舞のN『なんだ、そういう意味か……』
零時「いつも独りだよな?」
櫻舞「いけない?」
零時「いや、全然」
櫻舞「あなたは――あなたはこっちで友達出来たの?」
零時「んーーー……まあ、話をするくらいのやつはいるけど」
櫻舞「そ」
 コーヒーが運ばれてくる。

**********

 また窓の外をぼんやり眺めている櫻舞。
零時「暇だな」
櫻舞「そお?」
零時「どっか行かねえ?」
櫻舞「はい?」
零時「お前も暇そうだし」
櫻舞「あの。思ってたんだけど、友達でもないのに、お前 とか呼ばれるの嫌なんですけど?」
零時「しょうがねえだろ。名前知らねえし」
櫻舞「……」
零時「俺は名乗っただろ?」
櫻舞「…………東条」
零時「名前は?」
櫻舞「(溜息)櫻舞……」
零時「よろしくな、櫻舞」
 そういって手を差しだしてくる。
櫻舞のN『いきなり呼び捨て?……』
 零時の笑顔に悪意は感じない。
 櫻舞は仕方なく握手をする。
零時「じゃあ行こうか」
 手を取ったまま立ち上がる零時。
櫻舞「ええ?いや、一緒に行くなんて言って――」
零時「お金ここに置いておきます」
 そういってテーブルに1000円札を置いて出口へと向かう。
 引きずられるようについていくしかない櫻舞。
櫻舞「あ、あたしお金払ってない」
零時「1000円置いたから足りるだろ?」
櫻舞「いや。あなたに奢ってもらう理由ないし」
零時「この前のお返し」
櫻舞「この前?」
零時「公園でサンドイッチとジュースくれたろ?」

<インサート>
 ストローの挿してあるパックのジュース。
 ストロー部分のクローズアップ。
<インサート終了>

櫻舞「あれは……」
零時「いいから行こうぜ」
 店から櫻舞を連れ出す零時。

●道路沿い
 ガードレール。
 片側1車線の狭い道。
 さらに狭い歩道。
 手を握られたまま後をついて歩く櫻舞。
櫻舞「どこへ行くの?」
零時「わかんね」
櫻舞「わかんないって……」
零時「俺、まだこの街よく知らないし、櫻舞が教えてくれると助かる」
櫻舞「そんな無責任な……」
零時「それに、決めた道を進むより、どこへ着くかわからない道を歩いた方が面白いだろ?」
 ハッとした顔になる櫻舞。
 零時は行き先も決めぬまま、どんどん歩いてゆく。

つづく




(image ED theme トラブルメイカー 相川七瀬)

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