創作【4seasons】第6話 カンキョウヘンカ

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【4seasons】第6話 カンキョウヘンカ

(img OP 微炭酸 Juice=Juice)

●エレベーター内
 落ち着かない様子でエレベーターに乗っている莉々。
莉々のN『今更だけど、これで良かったのかな?……あれから愛菜とは以前より仲良くはなったけど、もしかして、本気で同居するとは思ってなかったのかも……』

●都内某所の喫茶店内(回想)
 硬い表情でテーブルについている莉々。
 頼んだコーヒーは口を付けぬまま冷めてしまっている。
 莉々の正面には派手な格好をしたアキラが座り、革張りのカバーのついたノートに目を通している。
 ひとつ息を吐きだす莉々。
アキラ「(ノートを見たまま)学校はどうするの?」
莉々「続けます」
アキラ「誘ったのはあたしだし、それは間違ってないと思ってるわ。ただ、あなたの人生だし、それについては責任は持てないわよ?」
莉々「はい」
アキラ「(ノートを閉じ、コーヒーを一口飲み)自分探しとか、派手な生活がしたいとかいう気持ちならやめておきなさい」
莉々「そんなつもりは……」
アキラ「これは仕事、ビジネスなの。わかる?」
莉々「え、ええ……」
アキラ「こんな見た目のせいで誤解されてるかもしれないけど、仕事に関してはプロの自覚があるのよ」
莉々「(神妙に)はい……」
アキラ「もうわかってると思うけど、あたしは女に興味ないの。こんな仕事してるけど、それは得意だから。女や女の子が好きなわけじゃない。こういうスタイルのお陰で舐められることも多いわ。バカな成金のオヤジなんかは、面と向かってオカマ野郎なんて言うしさ」
 答えに窮する莉々。
アキラ「けど、そんなのどうでもいい。あたしはあたしの考える商品を作って売る。この場合、商品というのは綺麗にした女ね。つまり、あたしと仕事をするってことは、あなたも商品になるってこと。わかる?」
 頷く莉々。
アキラ「あたしはプロのプライドとして、商品は完璧にする。そのためには商品側が勝手を云ったり、ワガママなんてさせない」
莉々「……」
アキラ「愛菜の目標も目的も知ってる。あの子にとって今は終着点じゃない。あくまで通過点。でも、彼女があたしの手に掛かっている以上、求められる最高に仕上げる」
 頷く莉々。
アキラ「もちろんあの子の持って生まれたものが大きいけれど、それだけなら今の場所までたどり着いていないとあたしは思っているわ」
莉々「アキラさんの力――ですか?」
アキラ「(当然と頷き)いうなればアレよ。愛菜が完成品の自動車だとして、あたしはパーツ専門の子会社。車を動かす動力じゃないけど、完璧なパーツを作ることで車としての商品価値を高めている。そういう感じ、わかる?」
莉々「なんとなくは……」
アキラ「あなたが最終的に目指しているものは知らない。というより、ガキ過ぎて自分でもわかってないでしょう?」
莉々「そうですね……というより、話を聞いていて余計自信がなくなりました……」
アキラ「あんた、得意なことあるの?特技とか、人に見せて恥ずかしくないものとか、見せたいものとか」
莉々「いえ……特には……」
アキラ「まずはそこからね。何度も云ってるけど、あたしはプロだから、あんたをそれらしく見せることは出来る。けど、いくらパーツを揃えても本体がスカスカじゃあすぐにメッキが剥がれる。一瞬だけ派手にやって小銭を稼げればいいっていうならそれもありだろうけど、人生は長いからね」
莉々「……」
(回想終了)

●愛菜の部屋の前
 ドアの前に立つ莉々。
 インターフォンを見つめ、しばし立ちすくむ。
 目を閉じ、呼吸を整えると、決然とした表情になり、インターフォンを押す。

●愛菜の部屋・リビング
 笑顔の愛菜。
 彼女の後をついて部屋の中へ入る莉々。
愛菜「とりあえず座って。何か飲み物出すから」
莉々「いや、お構いなく……」
 愛菜は笑顔のままキッチンへと向かう。
 莉々は改めて部屋を見回す。
莉々のN『愛菜は小さなマンションって云ってたけど、一人暮らしにしてはかなり広い。恐らく3LDKだろう』
 グラスにジュースを注いだグラスを盆に乗せて運んでくる愛菜。
愛菜「(笑い)なんで立ってるのよ?座ってよ」
莉々「あ、ああ……」
 頷いてソファに腰を下ろす莉々。
 愛菜はテーブルを挟んだ正面に座り、ジュースのグラスを莉々の前に置く。
莉々「ありがとう……」
愛菜「流石は莉々だね」
莉々「何が?」
愛菜「(壁の時計を指さし)時間きっかりに来た(笑)」
莉々「うん……早すぎても遅くても悪いかなと思って」
愛菜「莉々のそういうところ好きだわ」
莉々「そお?」
愛菜「この仕事にも役立つし」
莉々「そっか」
愛菜「芸能界は一般社会とちょっと違うところも多いけど、時間厳守は基本だからね」
莉々「それはアキラさんにも云われた」
愛菜「アキラちゃんは仕事に関しては厳しいからねえ」
莉々「みたいだね」
愛菜「でも、まさか莉々が同じグループに入るとは思わなかったよ」
莉々「アイドルかあ……決心したつもりだけど、あたしに出来るのかな……」
愛菜「社長がGO出したんだから、行けるでしょ」
莉々「そうなのかなあ……」
愛菜「ウチは芸能事務所の規模こそ小さいけど、社長の手腕で一気にそこそこの会社になった。薄利多売より少数精鋭路線で、こだわりがある。あたしも最初はアイドル?って思ったけど、社長の話を聞いてやってみることにしたんだよ」
莉々「そうなんだ?」
愛菜「資料のビデオは見たんでしょ?」
莉々「(頷き)一応」
愛菜「どう思った?」
莉々「どうって……この世界のことはよく知らないけど、なんか他のグループとは違うかなって……」
愛菜「そう。衣装もフリフリのやつなんかは着ないし、曲もアイドル系の作曲家には頼んでない」
莉々「そういわれてみると、可愛いって感じじゃないね」
愛菜「それには理由があるんだよ」
莉々「どんな?」
愛菜「社長は元アイドルだったんだよ」
莉々「そうなの?」
愛菜「社長は見ての通り、そんなに美人じゃない。でも、歌を歌いたくてこの世界に入ってきた。けど現実は厳しくて、売るために似合いもしない服を着て、かわい子ぶった振り付けを踊って、結局大して芽が出ないまま終わっちゃった」
莉々「……」
愛菜「その時思ったんだってさ。自分は夢を叶えられなかったけど、後に続く子たちにはこんな思いをさせたくないって」
莉々「なるほど」
愛菜「そんな人だから、あたしはハッキリ”、目指しているのはアイドルじゃない”って云っても、平然と受け入れてくれたよ」
莉々「いいなあ」
愛菜「何が?」
莉々「愛菜にははっきりした目標があって、そこを目指しているわけでしょ?」
愛菜「ああ。そうだけど、莉々も見つかるんじゃない?今はハッキリしたものがなくてもさ。まだ15なんだし。今の歳で将来決めてる人なんてめったにいないでしょ?」
莉々「見つかるといいな……」

つづく

(img ED ポツリと- Juice=Juice)

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